PhiloType は、日常の場面での判断や納得の仕方を4つの軸で分類し、16タイプのいずれかを結果として表示します。各軸は二つの極からなり、タイプコードは [L/P][A/K][T/I][S/E] の4文字で表記します。8つの文字はすべてギリシャ語の哲学用語の頭文字で、互いに重複しません。
設計の前提
軸は日常の思考や判断のスタイルで測定し、結果のラベルには哲学の言葉を使います。質問に答えるために哲学の知識は必要ありませんが、結果からは哲学史上の議論にたどり着けるように設計しています。
どの軸も、両極をともに肯定的なものとして扱います。一方の極が優れていて他方が劣る、という読み方はしません。この原則は、後述するヴィンデルバントが二つの認識の方向を等しく正当で互いに還元できないものとしたことに根拠を置いています。また、4つの軸はそれぞれ独立に判定します。
4軸の一覧
| 軸 | 対立 | 問い | 理論的な出所 |
|---|---|---|---|
| L / P | Logos(論理)と Pathos(共感) | 何によって納得するか | パスカル『パンセ』の「幾何学の精神」と「繊細の精神」 |
| A / K | Archē(足場)と Kinesis(運動) | 思考をどのように展開するか | パルメニデスの不変の存在と、ヘラクレイトスの万物流転 |
| T / I | Telos(目的)と Idion(固有性) | 価値をどこに見出すか | ヴィンデルバントによる法則定立的と個性記述的の区別 |
| S / E | Skepsis(懐疑)と Eros(受容) | 真理にどう向き合うか | ピュロン主義の判断保留と、プラトン『饗宴』のエロス論 |
L / P:納得の仕方
L(Logos)は、思考の最終的な根拠を論理的な整合性に置く極です。納得の基準は「筋が通っているか」にあり、概念を厳密に定義し、前提から結論への推論を重視します。P(Pathos)は、最終的な根拠を体験的な確信に置く極です。納得の基準は「腑に落ちるか」にあり、身体感覚や直観、共感、美的な感受性を通じて真理に触れようとします。
理論的な出所は、パスカルが『パンセ』で区別した二つの精神です。幾何学の精神は、少数の明確な原理から論理的に展開します。これに対して繊細の精神は、多数の微妙な原理を、推論によらず一目で把握します。なお、軸の名称はアリストテレス『弁論術』の説得の三要素(ロゴス・パトス・エートス)に由来します。
哲学者は全員が論証を書くため、論証を書いていることだけを理由に L とは判定しません。
判定テスト
論理的な分析と体験的な確信が矛盾したとき、最終的にどちらを採るか。
A / K:思考の展開の仕方
A(Archē)は、思考の足場として安定したものを据えてから展開する極です。足場になるのは原理や前提、信仰、自然法則などで、意識して選んだものでも、自明の前提として機能しているものでもかまいません。K(Kinesis)は、足場を固定せずに動きながら考える極です。対話や弁証法、歴史的な展開、試行錯誤といったプロセスを思考の場とします。
理論的な出所は、不変の存在を説いたパルメニデスと、万物の流転を説いたヘラクレイトスの対立です。Kinesis は、アリストテレス『自然学』の中心概念である「運動」を指す語です。
判定では、到達した結論ではなく、思考を始めるときの起動の仕方を見ます。変化について論じていても、出発点に動かない原理を置いていれば A と判定します。この基準は当初「方法の出発点」として定義していましたが、外部の判定者による検証で判定を再現できなかったため、「足場」の概念で再定義しました。
A / K は政治的な保守と革新に対応するように見えますが、両者は別の区分です。たとえばカントは啓蒙主義者でありながら A に、ヘーゲルはプロイセン国家を肯定した面を持ちながら K に分類されます。
判定テスト
思考を始めるとき、安定した足場を据えてから展開するか、足場を固定せずに動きながら考えるか。
T / I:価値の置き場所
T(Telos)は、個を超えた秩序や法則、目的のなかに意味を見出す極です。自分の思考を、体系や伝統、共同体、歴史の方向性といった自分より大きな枠組みの中に位置づけます。I(Idion)は、普遍に還元できない一回限りの固有性のなかに意味を見出す極です。全体の秩序が取りこぼすものや、そこからはみ出すものに関心を向けます。
理論的な出所は、新カント派のヴィンデルバントが1894年、シュトラスブルク大学の学長就任講演で示した区別です。法則定立的な認識は普遍的な法則のかたちで一般的なものを求め、個性記述的な認識は一回限りの出来事の特異性を理解しようとします。ヴィンデルバントは両者を、等しく正当で互いに還元できないものと位置づけました。
この軸では、表面的な特徴だけで判定しないように注意します。体系を構築していても、その関心が体系に回収されないものに向いていれば I です。反対に、既存の秩序を批判していても、より正しい秩序の構築を目指していれば T です。
判定テスト
思考の最終的な関心は、全体の秩序を示すことにあるか、秩序が取りこぼすものを示すことにあるか。
S / E:真理への態度
S(Skepsis)は、欠如の自覚にとどまる極です。探究ではまず疑って検証し、人間を限界のある存在と捉え、世界との間に距離を保ちます。E(Eros)は、求める運動に身を委ねる極です。探究ではまず惹かれて受け入れてから深め、人間を自らの限界を超え出る存在と捉え、世界に対して根源的な信頼を持ちます。
理論的な出所は二つあります。一つはプラトン『饗宴』のエロス論で、人間を欠如から美へ向かう中間的な存在として描いています。もう一つはピュロン主義で、判断の保留(エポケー)によって心の平静(アタラクシア)に至る態度を説きました。人間は欠如を自覚しつつ求める存在であるため、欠如の自覚にとどまる S と、求める運動に身を委ねる E という両極が生じます。
判定は、通常は探究の初期の態度で行います。初期の態度で判断がつかない場合に限り、人間観によって最終的に判定します。また、多くの哲学者が何らかの形で限界の超克を論じているため、超越を論じていることだけを理由に E とは判定しません。
判定テスト
人間を根源的に有限な存在と捉えているか、超越しうる存在と捉えているか。
4軸の独立性
軸どうしの相関が高いと、組み合わせても得られる情報が増えません。そこで PhiloType では、182名の哲学者を28の候補軸で二値に分類し、軸どうしの相関(φ係数)を算出しました。その結果、現行の4軸の組み合わせは、候補から4軸を選ぶ20,475通りのうち41位(上位0.2%)で、4軸間の相関の絶対値は最大でも0.172でした。
ただし、この検証は哲学者の分類データにもとづいています。一般の回答者でも同じ独立性が保たれるかは、今後の回答データで確認します。
16タイプとの関係
4軸の極を組み合わせると、16のタイプが得られます。PhiloType は各タイプに名前とキャッチコピーを付け、同じ思考の傾向を持つ哲学者を「解釈」側と「介入」側に一人ずつ配置しています。自分がどの極に近いかは、診断で確かめられます。